科博に行ってきました。
企画展「知られざる海生無脊椎動物の世界」 |
3月半ばから開催されているこの展示、チラシからも口コミからも端脚類の噂は聞こえてこない。海産無脊椎
フクロエビ上目の親戚を表敬訪問。 |
ヨコエビいました。 |
最後に真理が書かれていた。 |
この冊子、展示内容がぎゅっとまとまってるのに無料です。 正気とは思えないぜ(誉め言葉)。 |
ざっと15年ぶりですかね。 |
クジラジラミを表敬訪問。 |
徒然なるままにヨコエビ(gammaridean amphipod)を愛でる。主に活動の進捗報告。 ※当ブログの画像や文章を転載される場合は出典を明記願います。また商業利用の場合は事前にご連絡願います。
科博に行ってきました。
企画展「知られざる海生無脊椎動物の世界」 |
3月半ばから開催されているこの展示、チラシからも口コミからも端脚類の噂は聞こえてこない。海産無脊椎
フクロエビ上目の親戚を表敬訪問。 |
ヨコエビいました。 |
最後に真理が書かれていた。 |
この冊子、展示内容がぎゅっとまとまってるのに無料です。 正気とは思えないぜ(誉め言葉)。 |
ざっと15年ぶりですかね。 |
クジラジラミを表敬訪問。 |
端脚類にまつわる楽曲は以前紹介しましたが、今回は端脚類をコンセプトに含むバンドというのを採り上げたいと思います。
それは、1970年台からアメリカを拠点に活動した「Pods」(ポッズ)です。
ジャンルとしてはサイケデリックロックとファンクのブレンドとされ、近未来的なコンセプトを貫いたエレクトリックミュージックの実験者でした。メンバーはオリオン・ガストロポッド,マルス・ストマトポッドといった具合に、天体+生物という組み合わせの名前をもち、ルナ・アンフィポッドが端脚類担当ということになります。
[左より] ソラ・アイソポッド(ドラム),ルナ・アンフィポッド(キーボード),オリオン・ガストロポッド(リーダー兼メインボーカル),マルス・ストマトポッド(ギター),メテオ・コペポッド(ベース) |
国内外で有名なのは、1980年に発売された5枚目のアルバム「Stellar Morphology」で、全米200万枚のヒットを飛ばしました。
また、1985年7月にロサンゼルスで開催されたライブ「Jagged Orbit: Kaleidoscopic Exoskeleton」は、2万人の熱狂的なファンを集めました。この伝説的ライブでは、途中の演出で海産無脊椎動物をモチーフにしたコスチュームをまとったダンサーが登場したことも有名で、その中にはヨコエビっぽいものもいます。
サード・ディスコグラフィー「Ethereal Articulation」(1977年) |
そんな「Pods」ですが、音楽スタイルが時代とマッチせず興行に陰りが出始めたこと、環境活動へのメッセージ性を強めたことで純粋な音楽ファンが離れて徐々に勢いを失い、リーダーのオリオンがスピリチュアルへの傾倒を深めて放浪の旅に出たことが決定打となり、1990年台の早い時期に音楽シーンから姿を消してしまいました。
しかし、サイケデリックロックのブームが再燃するたび、「Pods」は後の時代の聴衆に再発見され続けているようです。今後も「Pods」の伝説は続いていくのではないでしょうか。
というわけで、今年もエイプリルフールでした。ただ、端脚類をモチーフとしたバンドが本当に存在しないとは言い切れないので、今後も捜索は続けていきます。
なお、本稿の画像作成にはChatGPTおよびCraiyonのサポートを得ました。
今年もヨコエビの知見を得るのに有用な文献を紹介します。
(第一弾)
— 富川・森野 (2009) ヨコエビ類の描画方法
— 小川 (2011) 東京湾のヨコエビガイドブック
— 石丸 (1985) ヨコエビ類の研究方法
— Chapman (2007) "Chapman Chapter" In: Carlton Light and Smith Manual (West coast of USA)
— 平山 (1995) In: 西村 海岸動物図鑑
— Barnard & Karaman (1991) World Families and Genera of Marine gammaridean Amphipoda
(第二弾)
— Lowry & Myers (2013) Phylogeny and Classification of the Senticaudata
— World Amphipod Database / Amphipod Newsletter
— 富川・森野 (2012) 日本産淡水ヨコエビ類の分類と見分け方
— Arimoto (1976) Taxonomic studies of Caprellids
— Takeuchi (1999) Checklist and bibliography of the Caprellidea
— 森野 (2015) In: 青木 日本産土壌動物
【コラム】文献情報のルール
(第三弾)
— 有山 (2016) ヨコエビとはどんな動物か
— 森野・向井 (2016) 日本のハマトビムシ類
— Tomikawa (2017) Freshwater and Terrestrial amphipod In: Species Diversity of Animals in Japan
— Bousfield (1973) Shallow-Water Gammaridean Amphipoda of New England
— Ishimaru (1994) Catalogue of gammaridean and ingolfiellidean amphipod
— 椎野 (1964) 動物系統分類学
【コラム】ヨコエビの分類にはどこから手を付けるか
(第四弾)
— Lowry & Myers (2017) Phylogeny and Classification
— Bellan-Santini (2015) Anatomy, Taxonomy, Biology
— Hirayama (1983–1988) West Kyushu
— 井上 (2012) 茨城県のヨコエビ
— 永田 (1975) 端脚類の分類
— 菊池 (1986) 分類検索, 生態, 生活史
【コラム】文献の入手
(第五弾)
— Arfianti et al. (2018) Progress in the discovery
— Ortiz & Jimeno (2001) Península Ibérica
— Miyamoto & Morino (1999) Talorchestia and Sinorchestia from Taiwan
— Miyamoto & Morino (2004) Platorchestia from Taiwan
— Morino & Miyamoto (2015) Paciforchestia and Pyatakovestia
— 笹子 (2011) 日本産ハマトビムシ科
【コラム】野良研究者
(第六弾)
— Lecroy (2000–2011) Illustrated identification guide of Florida
— Cadien (2015) Review of NE Pacific
— Copias-Ciocianua et al. (2019) The late blooming amphipods
— Spence Bate & Westwood (1863) British sessile-eyed Crustacea
— 青木・畑中 (2019) われから
— Bousfield & Hoover (1997) Corophiidae
【コラム】ヨコエビの同定
(第七弾)
— 岡西 (2020) 新種の発見
— Conlan (1990) Revision of Jassa
— Ariyama (1996) Four Species of Grandidierella
— Ariyama (2004) Nine Species of Aoroides
— Ariyama (2007) Aoridae from Osaka and Wakayama
— Ariyama (2020) Six species of Grandidierella
【コラム】ヨコエビリティの探索
(第八弾)
— Hughes & Ahyong (2016) Collecting and processing
— Буруковский & Судник (2018) Атлас-определитель Балтики и Калининградской
— Гурьянова (1938) Gammaroidea заливов Сяуху и Судухе
— Гурьянова (1951) Бокоплавы морей СССР
— Цветкова (1967) Бокоплавов залива Посьет
— Takhteev et al. (2015) Checklist of the Amphipoda from continental waters of Russia
【コラム】海外の司書さんを$29でパシる方法
(第九弾)
— 有山 (2022) ヨコエビガイドブック
— 富川 (2023) ヨコエビはなぜ「横」になるのか
— Bousfield & Hendrycks (1995) Eusiroidea in North American Pacific I
— Гурьянова (1938) Amphipoda, gammaroidea Zajibob Siaukhu i Sudzukhe
— Гурьянова (1951) Бокоплавы морей СССР
— Tomikawa et al. (2017) enigmatic groundwater amphipod Awacaris kawasawai revisited
【コラム】ヨコエビ採集の安全対策
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<今年の新作>
このブログでもたびたび取り上げてきた「ヒメハマトビムシ問題」について、本邦ハマトビムシ上科の権威・森野先生によるレビューが出ました。膨大な仕事量が伺えますが、本文はかなりコンパクトにまとまっています。標本の検討が国内の2種のみに留まっている点と、遺伝子の解析を行っていない点については、更なる研究が俟たれる状態といえますが、日本全国のかなりの地点を網羅していることから、地域個体群の種同定においてかなり心強い資料になるかと思います。
本研究では、Lowry and Myers (2022) で記載された Demaorchestia hatakejima を、記載の根拠となったスケッチと同ロットの標本を用いて検証し、タイヘイヨウヒメハマトビムシ Platorchestia pacifica の新参シノニムとするのが妥当との結論を下しています。また、同じ論文で記載された D. mie について、有効性の否定には及んでいませんが、同じ特徴を具える個体は国内から得られなかったと述べています。本邦の「ヒメハマトビムシ種群」は完全に解明されたとは言えないまでも、専らタイヘイヨウヒメハマトビムシとクシヒメハマトビムシ Demaorchestia joi の2種が優占すると考えてよさそうです。この2種については笹子 (2011) や森野・向井 (2016) で既に国内分布の検討が行われているため、これら資料を組み合わせることで地域個体群の理解はさらに深まるものと思われます。また、本論文の出版により「ヒメハマトビムシ」という種名のヨコエビは消滅し、この和名は種群名あるいは便宜名となりました。
日本産および採集される可能性がある7種について、二又式検索表を提供。ただし、かなりあっさりしているため、標本の同定に際しては、本文や他の文献も参考にして、複数の角度から検討したほうがよいです。本文は無料で読めます。
<アゴナガヨコエビ科の分類にオススメ>
2022年10月よりアゴナガヨコエビ科担当に就任しましたが、まだあまり仕事をもらってません。粛々と情報発信してまいります。
— Bowman, T. E. 1974. The "Sea Flea" Dolobrotus mardenis n. gen., n. sp., A Deep-Water Amarican Lobster bait Scavenger (Amphipoda, Eusiridae). Proceedings of the Biological Society of Washington, 87(14): 129–138.
6属の検索表を掲載。Djerboa属,Dolobrotus属,Schraderia属はアゴナガヨコエビ科から変更ありませんが、Leptamphopus属,Oradarea属はウラシマヨコエビ科、Bouvierella属のみテンロウヨコエビ科に移っています。
<イソヨコエビ属の分類にオススメ>
ブラジルからイソヨコエビの新種を記載した論文ですが、当時の世界の既知102種全てが検索表に落とし込まれており、非常に重要な資料です。ただし、なぜかNo.8が無いなど一部不可解な部分があるため注意が必要です。
<トゲホホヨコエビ属の分類にオススメ>
50年前の文献ですが、今なおトゲホホヨコエビ属の同定に有用な資料です。入手の敷居が低いのも嬉しいです。
韓国に産するトゲホホヨコエビ属のキーが掲載されています。日本近海で本属を同定するには欠かせない資料といえます。
<参考文献>
— 森野浩・向井宏 2016. 砂浜フィールド図鑑(1)日本のハマトビムシ類. 海の生き物を守る会, 京都市(*). (*当時)
— 笹子由希夫 2011. 日本産ハマトビムシ科端脚類の分布と分子系統解析. 三重大学修士論文.
<コラムの参考文献>
— Gurjanova, E. F. 1938. Amphipoda, gammaroidea Zajibob Siaukhu I Sudzukhe (Japonskoe More) [Amphipoda, gammaroidea of Siaukhu Bay and Sudzukhe Bay (Japan Sea)]. Fijnaj Akademii Nauk SSSR, Trudy Gidrobiojogicheskoi Ekspedichii Zinan 1934 Japonskoe Morei [Reports of the Japan Sea Hydrobiological Expedition of the Zoological Institute of the Academy of Science USSR in 1934], 1: 241–404. (In Russian)
— Myers, A. A. 2014. Amphipoda (Crustacea) from the Chagos Archipelago. Zootaxa, 3754(1).
— 島野智之・脇司 (編著) 2023. 『新種発見物語 足元から深海まで11人の研究者が行く!』. 岩波書店, 東京. 270 pp. ISBN:9784005009664
— Sir, S.; White, K. N. 2022. Maerid amphipods (Crustacea: Amphipoda) from Okinawa, Japan with description of a new species. Zootaxa, 5093(5): 569–583.
(1)じけんはっ生
こうたくん: はかせ!ヨコエビの名前が長いんだって!
はかせ: どれどれ、見せてごらん。
これまでにつけられた学名で最も長いとされるものは51文字のGammaracan-thuskytodermogammarus loricatobaical-ensisという甲殻類ヨコエビの仲間だ。発音すれば「ガンマラカントゥスキトデルモガンマルス・ロリカトバイカレンシス」となる。(ソトコト)
はかせ:ホッホッホッ、これはロマンのかけらじゃよ。
こうたくん:どこが?
はかせ:これはただのエッセイで、げんじつの「生ぶつ学」と、かんけいあるとは、かぎらないんじゃ。
こうたくん:なんだ~。じゃあうそなの?
はかせ:いやいや、「もっとも長いとされる」と、大じなところはだんげんしておらん。「生ぶつ学」の話ではないが、ウソでもないぞい。
こうたくん:じゃあ、いちばん長い名前は、ほんとにこのヨコエビなの?
はかせ:それはどうかのう。ちょっとしらべてみるぞい。
(2)しつもん
はかせ:「ガンマラカントゥスキトデルモガンマルス・ロリカトバイカレンシス」は長すぎるので、これから[K1]と書いてあったら、これのことじゃと思ってくれい。
こうたくん:うん。
はかせ:この話は、メアリー・ジェーン・ラスバンさんが「どうぶつ めい名ほう 国さい しんぎ会」にしつもんをしたところから、はじまるようじゃのう。ラスバンさんといえば、カニかいわいでちょうゆう名なアメリカのけんきゅうしゃだぞい。
こうたくん:どうぶつ…めーめー?
はかせ:どうぶつに学名をつけるときに、おきることがある、いろいろむずかしいこと話しあうための、あつまりのことじゃよ。
こうたくん:ふーん。何があったの?
はかせ:ラスバンさんのしつもんは「ディボフスキィさんが Dybowski (1926a) でヨコエビにつけた学名はこのままでいいのか?」というのじゃのう。たとえばこんな名前じゃ。
こうたくん:げー、なにこれ。きもちわるっ。ダメにきまってんじゃん。
はかせ:そしてこれが Dybowski (1926a) にのってる「ぞく」の、いちらんなわじゃが、
I. Genus Boeckia Grimm.II. Genus Siemienkiewicziella Dyb.III. Genus Sowicnskiella Dyb.IV. Genus Paradoxogammarus nov. gen. Dyb.V. Genus Hyalellopsis Stebb.VI. Genus Crypturopus Sow.VII. Genus Micruropus Stebb.VIII. Genus Baicalogammarus Stebb.IX. Genus Microgammarus Sow.X. Genus Echiuropus Sow.XI. Genus Brandtha BateXII. Genus Rugosogammarus Dyb.XIII. Genus Morawitzigammarus Dyb.XIV. Genus Smaradinogammarus Dyb.XV. Genus Paramicruropus Stebb.XVI. Genus Pentagonurus Sow.XVII. Genus Hakonboeckia Stebb.XVIII. Genus Gymnogammarus Sow.XIX. Genus Plesiogammarus Stebb.XX. Genus Sukaczewigammarus Dyb.XXI. Genus Poekilogammarus Stebb.XXII. Genus Ignotogammarus Dyb.XXIII. Genus Pictogammarus Dyb.XXIV. Genus Sophianosigammarus Dyb.XXV. Genus Bifasciatohammarus Dyb.XXVI. Genus Branchialogammarus Dyb.XXVII. Genus Hyacinthinogammarus Dyb.XXVIII. Genus Ommatogammarus Stebb.XXIX. Genus Kietlinskigammarus Dyb.XXX. Genus Pulexogammarus Dyb.XXXI. Genus Macropereiopus Sow.XXXII. Genus Ursinopereiopus Dyb.XXXIII. Genus Pristipereiopus Dyb.XYXIV. Genus Odontogammarus Stebb.XXXV. Genus Cyanogammarus Dyb.XXXVI. Genus Unguisetosogammarus Dyb.XXXVI. Genus Stanislaviechinogammarus Dyb.XXXVIII. Genus Kietlinskiechinogammarus Dyb.XXXIX. Genus Laeviechinogammarus Dyb.XL. Genus Sophiaeechinogammarus Dyb.XLI. Genus Lividoechinogammarus Dyb.XLII. Genus Aheneoechinogammarus Dyb.XLIII. Genus Ceratogammarus Sow. —Ceratoechinogammarus Dyb.XLIV. Genus Leucophtalmoechinogammarus Dyb.XLV. Genus Leptoceroechinogammarus Dyb.XLVI. Genus Ibexoechinogammarus Dyb.XLVII. Genus Crassicornoechinogammarus Dyb.XLVIII. Genus Parvoechinogammarus Dyb.XLIX. Genus Ibexiformiechinogammarus Dyb.L. Genus Czerskiechinogammarus Dyb.LI. Genus Maackiechinogammarus Dyb.LII. Genus Strenuechinogammarus Dyb.LIII. Genus Toxophthalmoechinogammarus Dyb.LIV. Genus Longicornoechinogammarus Dyb.LV. Genus Polyartroechinogammarus Dyb.LVI. Genus Parvexigammarus Dyb.LVII. Genus Nematoceroechinogammarus Dyb.LVIII. Genus Kuzuniezowiechinogammarus Dyb.LIX. Genus Capreoloechinogammarus Dyb.LX. Genus Stenophthalmoechinogammarus Dyb.LXI. Genus Schamanensiechinogammarus Dyb.LXII. Genus Saphiriniechinogammarus Dyb.LXIII. Genus Viridiechinogammarus Dyb.LXIV. Genus Viridiformiechinogammarus Dyb.LXV. Genus Vittatoechinogammarus Dyb.LXVI. Genus SiemienkiewicziechinogammarusLXVII. Genus Petersiechinogammarus Dyb.LXVIII. Genus Violaceoechinogammarus Dyb.LXIX. Genus Sarmatoechinogammarus Dyb.LXX. Genus Graciliechinogammarus Dyb.LXXI. Genus Swartschewskiechinogammarus Dyb.LXXII. Genus Ussolzewiechinogammarus Dyb.LXXIII. Genus Cornutokytodermogammarus Dyb.LXXIV. Genus Eucarinogammarus K. G. Dyb.LXV. Genus Rhodophthalmo K. G. Dyb.LXXVI. Genus Pulchello K. G. Dyb.LXXVII. Genus Cheiro K. G. Dyb.LXXVIII. Genus Bronislavia (Rakowski) K. G. Dyb.LXXIX. Genus Coniurogammarus Sow. C. K.G. Dyb.LXXX. Genus Conipleono C.K. G. Dyb.LXXXI. Genus Ruber K. G. Dyb.LXXXII. Genus Reissneri K. G. Dyb.LXXXIII. Genus Parabrandtia K. G. Dyb.LXXXIV. Genus Axelboeckia Stebb. K. G. Dyb.LXXXV. Genus Gammaracanthus Bate K. G. Dyb.LXXXVI. Genus Korotniewi G. K. Dyb.LXXXVII. Genus Flavo K. G. Dyb.LXXXVIII. Genus Neo K. G. Dyb.LXXXIX. Genus Zienkowiczi K. G.XC. Genus Garjajewia Sow. K. G. Dyb.XCI. Genus Roseo K. G. Dyb.XCII. Genus Dryshenkoi Garj.XCIII. Genus Meyeri K. G. Dyb.XCIV. Genus Nigro K. G. Dyb.XCV. Genus Radoszkowski K. G.XCVI. Genus Platytropo K. G. Dyb.XCVII. Genus Armato K. G. Dyb.XCVIII. Genus Cancelloido K. G. Dyb.XCIX. Genus Pallasea Bate K. G. Dyb.CI. Genus Acanthogammarus Stebb. Acantho K. G. Dyb.CII. Genus Puzylli K G. Dyb.CIII. Genus Parapallasea Stebb.CIV. Genus Dawydowi K. G. Dyb.CV. Genus Varinurus Sow. Carinuro K. G. Dyb.
こうたくん:長っ。
はかせ:ふしぎなことに、ラスバンさんは「原記さい」としてこのろん文を引用してるはずなのに、本当にのってる学名は[R1]しかないぞい。
こうたくん:元気なの?
はかせ:ちがわい!その「しゅ」を「記さい」したろん文、つまりこれらのヨコエビに名前をつけた「けっていてきしゅん間」じゃ。
こうたくん:じゃあ、めーめーなんとかとは、かんけいないの?
はかせ:いくつかパターンがあるようじゃのう。バブァーさんによると、ディボフスキィさんがつけた学名を「しんぎ会」がむこうにしたのは、つぎの4つだそうじゃ (Barbour 1943)。
はかせ:じゃが、ラスバンさんの[R1]~[R5]と同じ学名は、1つもないんじゃ。Dybowski (1926a) には1つだけ同じ学名が、のっておるがのう。
こうたくん:長いヨコエビの名前は、けっきょくどうなってるの?
はかせ:ヨズヴィアクさんが言うには、Dybowski (1926a) がつけた6つの学名を「しんぎ会」がむこうにして、同じろん文で名前がつけられた、あの長ったらしい[K1]は、むこうになってない、とのことじゃ (Jóźwiak et al. 2010)。
はかせ:じゃが、この中にラスバンさんの学名は[R1]しかないんじゃ。
こうたくん:どういうこと?みんなへんだよ?
はかせ:ヨバブァーさんもズヴィアクさんも、何かかんちがいをしてるとしか、かんがえられんのう。
こうたくん:つかれてたの?
はかせ:1つたしかなのは、こうたくんがさいしょに言っていた[K1]は、Dybowski (1926a) にも、ラスバンさんの[R1]~[R5]にも、本当はのってなかったということじゃ。
こうたくん:長すぎてダメになったからじゃないの?
はかせ:むこうになったという記ろくも、そもそも本当にあったしょうこも、何もないんじゃ。
こうたくん:わけがわからないよ。
(3)「つみ」なき「つみ」
はかせ:ちなみに「Gammaracan-thuskytodermogammarus loricatobaical-ensis」というハイフネーションは「ソトコト」のあの記じオリジナルのようじゃ。
こうたくん:よこぼうがあるのは、うそってこと?
はかせ:そうでもないんじゃ。どうぶつでは今でこそゆるされないが、古い学名には Polygonia c-album みたいにハイフンが入ったものがある。
こうたくん:なんだ!よこぼう、あってもいいの?
はかせ:じゃか、このハイフンは「C」と「白」というように、べつのことばをつなぐように入っとるぞい。「ソトコト」のハイフネーションは、ことばのつながりとは、かんけいないところに入っておる。日本ごにすると、だいたいこんなかんじじゃ。
Gammaracan-thuskytodermogammarus
ヨコエビ トゲあり ? 革質の ヨコエビ
loricatobaical-ensis
鎧を着た バイカル 産の
はかせ:「acan-thus」は、ことばのとちゅうでハイフンが入っていて、ふしぜんじゃ。さいごの「baical-ensis」はたしかにハイフンを入れることはできるが、それよりも、その前のことばとの間に入れるほうが、くぎりとしてはしぜんじゃ。
こうたくん:「?」はどうしたの?
はかせ:「kyto」が何をいみするのか分からなかったんじゃ。くすぶるとか、やけるとか、そういういみとは思うんじゃが…
こうたくん:だっさ。
はかせ:うるさいわい!
こうたくん:じゃあ、その「-」がないのが本当なの?
はかせ:ハイフンがない[K1]がネットにあらわれるのは、21せいきからじゃ。2001年にはこういう記じがあったぞい。しらべたかぎり、これが[K1]のいちばん古いものらしい。
こうたくん:あれ、ひろきくん、いつの間に?
はかせ:うむ。さっきたしかめたとおり、ディボフスキィさんもラスバンさんも、本当は[K1]の話をしてなかったわけじゃ。
ひろきくん:この記じが、1から学名をつくったんですかね・・・
はかせ:そのことなんじゃが、[K1]のもとネタは、Dybowski (1926a) の「Gammaracanthus loricato-baicalensis」のことかもしれん。
こうたくん:これも長いじゃん!
はかせ:この学名は Dybowski (1926c) では「Gammaracanthus loricatus baicalensis」となっておるが、もともとこの「へんしゅ」に名前をつけたのはソウィンスキィさんで、ディボフスキィさんではないんじゃ (Sowinsky 1915)。[K1]はディボフスキさんがつけた名前と言われてるが、そこも話がもられているようじゃ。ちなみにもう1つ Dybowski (1926b) は「アカントガンマルス あか」の「Carinurus ぞく」をとりあげたもので、ぜんぜんかんけいないぞい。
こうたくん:キャラふえすぎて、入ってこないよ。
はかせ:ちなみに、この「loricato-baicalensis」のハイフンの入れかたは「ソトコト」とはちがって、よりしぜんなばしょに入っておる。
ひろきくん:1927年というせつも、あるみたいっすね・・・
はかせ:がい当する文けんは、どうやら、そんざいしないようじゃ。10月にとうこうされた Dybowski (1926c) を、1927年のしゅっぱんだと、かんがえた人がいるようじゃ。
こうたくん:それからそれから?
はかせ:2009年12月には、クレタ大学の Poulakakisさんが[k1]を話だいにしたこうぎスライドをネットにあげておる。
こうたくん:学こうのじゅぎょうなの?
はかせ:そうみたいじゃのう。このスライドはラスバンさんのしつもんの「画ぞう」をはってるし、Dybowski (1926a) を引用してるんじゃが、今まで言ってきたように、これらに[K1]はのっていないはずじゃ。こんきょになってないんじゃ。
こうたくん:そうなの?
はかせ:2010年あたりには、この長ったらしい[K1]が「しんぎ会」でみとめられなかったことが、きせいじじつになっていくぞい。
こうたくん:こんきょがないのに?
はかせ:2014年には「だいきげんじほう」が目をつける。これで知った人も多いきがするのう。日本で[K1]が広まっていったのは、おそらく2015年からじゃ。
ひろきくん:長い[K1]は、引用文けんといっしょに、日本ばんウィキペディアにものってますよね・・・
はかせ:このウィキの内ようは、2017年3月に「ヨコエビ」のこう目へ、ついかされたぞい。そして引用文けんは、2019年1月についかされたわけじゃが、Poulakakisさんのスライドと同じで、こんきょはないんじゃ。そして今は、書きなおされておる。
こうたくん:えっ?ウィキペディアに書いてあることはぜんぶ正しいんじゃないの?
はかせ:いやいや、ウィキは、しろうとが書いている、いいかげんなサイトじゃわい。
(4)けつろん
ひろきくん:ふたしかな話が、「生ぶつ学しゃ」もふくめて、広まってしまったんですね・・・
はかせ:ウィキや「ソトコト」のような「科学っぽい」記じが、ちゃんと作られなかったことが、もんだいじゃのう。ふつう「分るい」をせんもんにする「分るい学しゃ」は、けんきゅうのなかで「分けん」をよまず話をすすめることは、ありえないんじゃ。あの学名は「てきかく名」じゃないから、正しくあつかおうという心がけが足りず、手をぬいたのかもしれん。
こうたくん:いいかげんな人、多いんだね。
はかせ:ヨコエビの分るいは、こみ入っておるからのう。「ソトコト」のエッセイストはせんもん外の人じゃし、「原記さい」をよまないのは、むりもないと思うぞい。それはともかく、ウィキのほうは、それなりにヨコエビをべんきょうしてたはずじゃから、このまちがいは「たいまん」としか言いようがないのう。
こうたくん:どこをどうまちがえたら、ああなるの?
はかせ:[K1]は、今もつかわれている「Gammaracanthus」に「kytodermogammarus」をつけたものみたいじゃ。「ロリカトバイカレンシス」は、Dybowski (1926a) にある「loricato-baicalensis」のことみたいだのう。じゃがこれはもともと「loricatus baicalensis」として「しゅ」「へんしゅ」をならべていたものを、なぜかハイフンでつないだものだぞい。
はかせ:ラスバンさんが「しんぎかい」にあげた[R1]~[R5]のうち、 Dybowski (1926a) には[R1]だけ同じ。[R2]~[R5]は「ぞく」の頭だけ同じじゃ。
=[D2] Dybowski (1926) Siemienkiewicziechinogammarus siemienkiewitshi
はかせ:バブァーさんの[B1]~[B4]のうち、[B4]だけ Dybowski (1926a) に同じ名前がない。[B2]は「ぞく」だけラスバンさんの[R2]と同じじゃ。
=[D7] Dybowski (1926) Leucophthalmoechinogammarus leucophthalmus
=[D2] Dybowski (1926) Stenophthalmoechinogammarus stenophthalmus
=[D8] Dybowski (1926) Cornutokytodermogammarus cornutus
はかせ:ヨズヴィアクさんの[J1]~[J6]のうち、ラスバンさんと同じなのは[J5]だけ、Dybowski (1926a) と同じなのは[J1]だけで、あとはDybowski (1926a) とよくにているが、べつものじゃ。
=[D10] Dybowski (1926) Crassocornoechinogammarus crassicornis
=[D13] Dybowski (1926) Toxophthalmoechinogammarus toxophthalmus
=[R1] ICZN (1929) Siemienkiewiczieshinogammarus siemienkiewitshi
はかせ:バブァーさんのろん文からわかるように、ラスバンさんのしつもんから20年もたってないのに、話はかならずしも正しくつたわってないんじゃ。その後、ネットにあがってくる2000年台の間に[K1]のうわさが、出来上がったのかもしれんのう。じゃが、そのしんそうまでは、たどることができんかったぞい。
ひろきくん:でも・・・いっぱんの人が、じょうだん半分に楽しんでいる「としでんせつ」に、ここまでやるひつよう、ありますかね・・・ウィキペディアとかのネット記じはしょせんは「しろうと」ですし、「ソトコト」にしてもせんもん外の人が書いた「エスディージーズのエッセイ」ですし・・・
はかせ:科学をよそおった「としでんせつ」によくあるのが、ソースを見ないことや、ニセのソースをでっちあげることなんじゃ。日ごろからソースふめいの「科学だんぎ」になれきってしまうと、「エセ科学」にのみこまれる人を、ふやしてしまうかもしれんぞい。
こうたくん: そうなんだ!帰ったらお母さんにも教えてあげようっと。
(ついしん)
ウィキまちがってた。ごめんね。
<さんこうぶんけん>
— Barbour, T. 1943. The Sea and the Cave. The Atlantic monthly, 99–103.
— Dybowski, B. 1926a. Spis synoptyczny i krótkie omówienie rodzajów i gatunko'w kiełży Bajkału.—Synoptisches Verzeichnis mit kurzer Besprechung der Gattungen und Arten dieser Abteilung der Baikalflohkrebse. Bulletin of the Polish Academy of Sciences, Scientific Letters B: 1–77.
— Dybowski, B. 1926b. Prazyczynek do znajomości kiełży Bajkału. Rodzaj Paramicruropus (Stebbing). —Beitrag zur Kenntnis der Gammariden des Baikalsees. Die Gattung Paramicruropus (Stebbing). Bulletin of the Polish Academy of Sciences, Scientific Letters B: 79–94.
— Dybowski, B. 1926c. Uwagi i uzupełnienia do mojej praci o kiełżach bajkałskich —Bemerkungen und Zusätze zu meinen Arbeiten über die Gammariden des Baikalsees: 1924–1926. Bulletin international de l'Académie Polonaise des Sciences et des Lettres, Classe des Sciences Mathématiques et Naturelles, Série B, Sciences naturelles, 8B, S: 673–700.
— Dybowski, B. 1927. Bemerkungen un Zusatze zu meinen Arbeiten uber die Gammariden des Baikalsees. 1924–1926. Bulletin International de l'Academie Polonnaise des Sciences et des Lettres, Classe des Sciences Mathematiques et Naturelles, Serie B: Sciences Naturelles, 1927, 8B: 673–700.
— Jóźwiak, P.; Rewicz, T.; Pabis, K. 2010. Inspiracje I osobliwości naukowego nazewnictwa zoologicznego. Kosmos, 59(1–2) (286–287): 39–59.
— Sowinsky, V. K. 1915. Amphipoda ozera Baikala (Sem. Gammaridae). Zoologicheskiye issledovaniya ozera Baikala, IX., Kiev, 381 pp. 37 pls.
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「よこえびたんていだん」シリーズ
ネットにただようヨコエビ(とか)のうわさを、じゅんすいすぎるこうき心をもった「はかせ」と「こうたくん」がすきかってにきりまくる!よむ人みんなをこんわくにつつみこむ、マイナー分るいぐんエンターテインメントここにばくたん!
広島大学でヨコエビの展示があるとの情報を掴み、日帰りで突撃してみました。
広島大学です。 |
その道では知らぬ者のいないヨコエビのメッカで、毎年何本も記載論文が出ています。
広島大学中央図書館です。 |
地域・国際交流プラザです。 |
この「ヨコエビの系統分類学的研究とその成果の書籍化」は、去年出版された『ヨコエビはなぜ横になるのか』に関連する展示で、著者の富川先生が担当されているそうです。
基本的には、書籍やネット記事や一般向け講演の内容がコンパクトにまとめられ、ポスター化されていますが、「書籍化による研究内容の周知の意義」といった新しい切り口です。
学生さん手作りと思われる世界地図にヨコエビの写真が貼り付けられているのはなかなかかわいかったです。
標本はジンベエドロノミPodocerus jinbe,オオエゾヨコエビJesogammarus jesoensis,アケボノツノアゲソコエビAnonyx eous,ヒゲナガハマトビムシTrinorchestia trinitatis,ヒロメオキソコエビEurythenes aequilatusの5種で、うち2種が富川先生が関わって記載されたものになります(Narahara-Nakano, Nakano, & Tomikawa, 2017; Tomikawa, Yanagisawa, Higashiji, Yano, & Vader 2019)。ヒロメオキソコエビのインパクトは抜群。
ヒゲナガハマトビムシは…よくわかりませんでした。 trinitatis/longiramus問題についてはこちら。 |
また、シツコヨコエビJesogammarus acalceolus,Paronesimoides calceolus,アカツカメクラヨコエビPseudocrangonyx akatsukaiの直筆原画と原記載論文(Tomikawa & Nakano 2018; Tomikawa & Kimura 2021; Tomikawa, Watanabe Kayama, Tanaka, & Ohara 2022)、そして”例のパンダメリタ”の直筆原画の展示。ほとんどホワイトを入れず一気に全身図を描ききる技が工芸品や絵画の職人そのものです。
「原画展」というとマンガでは一般的でしょうか。一方、分類に携わる人間として、記載論文に使われたスケッチの実物を見られるというのは、その実物の貴重さのみならず、テクニックの一端を見られるという実利があります。私は記憶の限り一発で線画の墨入れをできたためしがないのですが、手直しするには余計な時間がかかるので、一発で仕上げるというのは芸術的なスキルだけでなく、効率的な記載図の生産という部分を考えずにはいられませんでした。
展示は1月いっぱいまでとのこと。無料で誰でも見れます。
<参考文献>
— 富川光 2023. 『ヨコエビはなぜ「横」になるのか』. 広島大学出版会, 東広島. 198pp. ISBN:978-4-903068-59-6
今年もヨコエビの新種です。
1月にクラゲノミ亜目の新種,7,12月にワレカラの新種が記載されていますが、あえて追っていません。
※2017年実績
※2018年実績
※2019年実績
※2020年実績
※2021年実績
※2022年実績
学名に付随する記載者については、基本的に論文中あるいは私信で明言のある場合につけています。
JANUARY
Özbek, Aksu, and Baytaşoğlu (2023)
Gammarus tumaf
トルコの洞窟から ヨコエビ属 Gammarus の1新種を記載。形態に加えてミトコンドリア遺伝子COI領域,28S領域の解析も行って同属他種との関係を示しています。本文まで無料で読めます。
Ariyama and Mori (2022)
クダヨコエビ Scutischyrocerus japonicus
長崎から カマキリヨコエビ科 Ischyroceridae の1新種を記載。日本と縁が薄く和名がなかった Scutischyrocerus に クダヨコエビ属 との和名を提唱しています。
また、これまで ユンボソコエビ科 Aoridae コンピラソコエビ属 Lembos に含まれていた ノゾキコンピラソコエビ を カマカヨコエビ科 Kamakidae の ルドワイエヨコエビ属 Ledoyerella に移動させるとともに、中国で記載された別の種も ルドワイエヨコエビ属 に含めています。本文は無料で読めます。
FEBRUARY
Shin (2023)
Paraphoxus jejuensis
済州島からヒサシソコエビ科 Phoxocephalidae ナミノコソコエビ属の1新種を記載。本文まで無料で読めます。
MARCH
Matsumoto, Kajihara, and Kakui (2023a)
Leipsuropus seisuiae
熊野灘からドロノミ属の1新種を記載。この属はオーストラリアから記載され、スベスベな種のみからなる単型分類群と思われていましたが、北西太平洋から続々とトゲトゲな種が記載され、デフォルトはトゲトゲであるとみなされるようになっています。また、本種の記載により属の構成種の過半数が日本から得られるに至っています。本文は無料で読めます。
Özbek and Aydin (2023)
Gammarus morcae
トルコから地下水性の無眼ヨコエビ属 Gammarus の1新種を記載。本文は無料で読めます。
Bhoi, Myers, Tarafdar, Smita, Jena, and Patro (2023)
Quadrivisio chilikensis
インドからスンナリヨコエビ科 Maeridae の Quadrivisio属の1新種を記載。この属は縦長で中央がくびれた特徴的な複眼をもちます。
Do Nascimento and Serejo (2023)
Caleidoscopsis carlosi
Caleidoscopsis karamani
南大西洋深海域からミコヨコエビ科 Pardaliscidae の2新種を記載。
Palatov and Marin (2023)
Diasynurella kiwi Marin et Palatov
Diasynurella dzhamirzoevi Palatov et Marin
Diasynurella cavatica Palatov et Marin
Diasynurella khalabensis Palatov et Marin
コーカサスからマミズヨコエビ科の4新種を記載。線画はなく、全ての付属肢を透過光写真で表現している珍しい記載です。本文は無料で読めます。
APRIL
Hughes and Lörz (2023)
Unciola conchicola
Unciola icelandica
アイスランドの深海域からユンボソコエビの類に近縁の Unciola属 の2新種を記載。既知の Neohela monstrosa についても写真や線画を添えて記録しています。本文は無料で読めます。
Ortiz, Winfield, and Ardisson (2023)
Pardaliscoides whiteae
メキシコ湾からミコヨコエビ科 Pardaliscidae の1新種を記載。米国のクリスティン・ホワイト博士に献名されています。
Durham and White (2023)
Synchelidium purpurivitellum
カリブ海からサンパツソコエビ属の1新種を記載。Hartmanodes nyeiについても再記載を行い、パナマ産3属3種の検索表を提供。本文まで無料で読めます。
MAY
Marrón-Becerra, Hermoso-Salazar, and Ayón-Parente (2023)
Hyalella marysolae
Hyalella morronei
メキシコ中部ハリスコ州の細流から Hyalella属の2新種を記載。本文まで無料で読めます。
Tomikawa, Kawasaki, Leiva, and Arroyo (2023)
Hyalella yashmara
ペルーの温泉から Hyalella属 の1新種を記載。広島大学のプレリリを受けて国内のメディアでも取り上げられ、海外のマイナー小型甲殻類の話題ながら、まあまあ盛り上がりました。
この本でも触れられていましたが、甲殻類の中でも指折りの高熱耐性をもつ、かなりの変わり者です。記載に加えて、分子系統解析に基づいてヒアレラ科の分散シナリオに新たな仮説を提示しています。本文は有料。
JUNE
Thacker, Myers, and Trivedi (2023)
Cymadusa kaureshi
インドからヒゲナガヨコエビ科 Cymadusa属 の1新種を記載するとともに、過去の C. filosa の記録についても精査しています。本文は有料。
Marin, Palatov, and Copilaş-Ciocianu (2023)
Litorogammarus dursi
ロシアのノヴォロシースクから6種のヨコエビを報告するとともに、1新種(新属)を記載。1種について属位変更も行っています。このエリアには未解明の多様性がある、とアブストにあります。本文は有料。
Shintani, Umemura, Nakano, and Tomikawa (2023)
アスワメクラヨコエビ Pseudocrangonyx asuwaensis
福井の採石場跡からメクラヨコエビ属の1新種を記載。生体写真はこちら。
Labay (2023a)
Paramoera staudei
Paramoera stepaniae
Paramoera nataliae
Paramoera erimoensis sakhalinensis
サハリンから ミギワヨコエビ属 Paramoera の3新種・1新亜種を記載。近年ヨコエビにおいて亜種が記載されることは非常に稀で、Labay氏くらいしかやってない気がします。本文は無料で読めます。
Marin and Palatov (2023a)
Pontonyx abchasicus
ロシア・アブハジアの森林地帯からマミズヨコエビ科に属する淡水性ヨコエビの1新種を記載。本文は無料で読めます。
JULY
Bhoi, Myers, Khatua, and Patro (2023)
Talorchestia buensis
インド東岸からハマトビムシ上科の新種。本文は有料ですが、アブストに比較的詳しく形態情報が示されています。
Varela, Fenolio, and Bracken-Grissom (2023)
Amathillopsis colemani
メキシコ湾の水深1200mの深海から、リュウコツヨコエビ科 Amathillopsidae の1新種を記載。第4~7胸脚の腕節より先が欠損しているあまり状態のよくない標本に基づいています。昨年引退したヨコエビ研究の大家・チャールズ・オリバー・コールマンに献名されていますが、特にこの種と直接の関係はないようです。記載文や所見の構成がごちゃごちゃしていてちょっと読みにくいです。本文は無料で読めます。
Marrón-Becerra and Hermoso-Salazar (2023)
Hyalella lacandonis
Hyalella montebellensis
Hyalella parva
メキシコ南部から Hyalella属 の 3新種を記載したとのこと。本文は有料。
AUGUST
Labay (2023b)
Renella lowryi
オホーツク海から、フトヒゲソコエビ類チョウチンソコエビ科 Pakynidae の1新種を記載。本文は有料ですが、アブストには詳細な形態の記述があります。
Baytaşoğlu (2023)
Echinogammarus ozbeki
トルコのギュミュシュハーネ県の滝からヨコエビ上科の1新種を記載。本文まで無料で読めます。
Matsumoto, Kajihara, and Kakui (2023b)
カイゾクワレカラドロノミ Capropodocerus tagamaru
オオガマワレカラドロノミ Capropodocerus kamaitachi
熊野灘および宮城県沖から、ドロノミ科 Podoceridae の1新属2新種を記載。巨大な咬脚を具える強壮な上半身と不釣り合いに見える華奢な下半身が目を引く珍種で、ずっと気になっていただけに出版されて安心しました。C. tagamaru の種小名は紀伊で活躍した海賊・多賀丸に、C. kamaitachi の種小名は妖怪・鎌鼬に、それぞれ因んでいるようです。本文は有料。
SEPTEMBER
Marin and Palatov (2023b)
Cryptorchestia ciscaucasica
ロシア・アブハジアから半陸棲ハマトビムシ類の1新種を記載。分子系統解析を実施して、近縁種との分岐年代推定を試みています。本文は無料で読めます。
OCTOBER
Özbek, Baytaşoğlu, and Aksu (2023)
Gammarus kunti
トルコの洞窟から有眼のヨコエビ属 Gammarus の1新種を記載。本文は無料で読めます。
NOVEMBER
Malek-Hosseini, Brad, Fatemi, Kuntner, and Fišer (2023)
Tegano tashanensis
イランの洞窟から Tegano属 の1新種を記載。洞窟性らしく無眼のようです。形態と分子を用いた記載です。
ちなみにこの属の状況について、唯一の本邦既知種である シオダマリメリタ T. shiodamari との関係を見ると、どうやら多系統なようです。これらの種の属位は暫定とみなければならないようです。
Wang, Sha, and Ren (2023)
Orchomenella compressa
沖縄トラフの熱水噴出孔からツノフトソコエビモドキ属の1新種を記載。ボリュームは少ないものの形態と分子の双方を検討しており、近縁7種との遺伝的距離も掲載。本文まで無料で読めます。
DECEMBER
Katnoum, Keetapithchayakul, Rahim, and Wongkamhaeng (2023)
Cerapus rivulus
タイのメークロン川からホソツツムシ属 Cerapus の1新種を記載。雌雄の付属肢を全部描画するという手間の掛けぶりが白眉です。また、胸脚のアンフィポッドシルク出糸口をSEM撮影するとともに、造管行動や交尾前ガード行動の画像および動画を提供しています。全世界のホソツツムシ属25種の検索表も提供。本文まで無料で読めます。
Ariyama and Moritaki (2023)
ヤドカリタテソコエビ Metopelloides lowryi
ヤドカリヨコエビ Isaea concinnoides
だいぶ前から鳥羽水族館が報じていた、熊野灘産・ヨコヤホンヤドカリPropagurus obtusifrons に付着する未記載のタテソコエビとイシクヨコエビが、やっと新種記載されました。Metopelloides属にヤドカリタテソコエビ属,Isaea属にヤドカリヨコエビ属との和名を提唱しています。ヤドカリタテソコエビ属5種,ヤドカリヨコエビ属4種の検索表を提供。有山 (2022) において2022年夏ごろに出ると予告されていた、ジェームス・ケネス・ロウリー追悼論文集に掲載。
※鳥羽水族館ブログ関連記事
Azman (2023)
Stenothoe lowryi
マラッカ海峡の潮間帯からタテソコエビ属の1新種を記載。オス第2咬脚が細長く掌縁が直線的ないわゆる gallensis グループ です。東南アジア産タテソコエビ属5種の形態の幅をマトリクスに整理しています。ロウリー追悼論文集に掲載。
Berents (2023)
Cerapus brevirostris
Cerapus chiltoni
Cerapus dildilgang
Cerapus lowryi
Cerapus moonamoona
ホソツツムシ属の5新種を記載。オーストラリア産ホソツツムシ属10種の検索表を提供。いずれの種も巣を描画しており、C. chiltoni, C. dildilgang, C. lowryi についてはヨコエビ本体側面・背面の凹凸や色素を表現した精緻な点描画も添えられています。ロウリー追悼論文集に掲載。
Karaman (2023)
Niphargus lowryi
マケドニア・オフリド湖畔から Niphargus属 の1新種を記載。1968年に大量の N. sanctinaumi に混じって採集されたサンプルに基づいた記載のようですが、その後は全く採集されていないそうです。ロウリー追悼論文集に掲載。
King, Stringer, and Leijs (2023)
Carnarvonis katjae
Warregoensis lowryi
オーストラリア北部の湧水より、メクラヨコエビ上科 Chillagoeidae科 に2種を記載するとともに、2属を設立。ロウリー追悼論文集に掲載。
Lörz and Peart (2023)
Amathillopsis lowry
ニュージーランド南東沖からリュウコツヨコエビ属の1新種を記載。線画に加えて、生時の色彩を示す写真と、ROVによる生態画像も掲載。また、A. grevei と A. cf. charlottae を報告し、ニュージーランド産リュウコツヨコエビ属4種群についてマトリクス検索表を提供。ロウリー追悼論文集に掲載。
Lowry and Fanini (2023)
Chroestia amoa
Thiorchestia caledoniana
ニューカレドニアから、海浜性ハマトビムシ科の2新種の記載と新属Thiorchestiaの設立。ニューカレドニア産ハマトビムシ類7種のオスの検索表を提供。ロウリー追悼論文集に掲載。
なお、本論文で Chroestia属 は ハマトビムシ亜科 Talitrinae となっていますが、Lowry and Myers (2022) で Platorchestinae亜科 とされており、その後移動を明示する記述はありません。定義上、形態的に識別不可能なので当然といえば当然ですが…。
Myers and Lowry (2023)
Platorchestia oliveirae
Platorchestia exter
Platorchestia negevensis
Platorchestia griffithsi
大西洋沿岸域から、ハマトビムシ科 Platorchestia platensis の隠蔽種に位置づけられる4新種を記載。この記載は実物に基づいており、液浸標本のカラー写真が掲載されています。それにしても、Lowry and Myers (2022) の”P. koreanensis”は一体どうなったんでしょう…。ロウリー追悼論文集に掲載。
Okazaki and Tomikawa (2023)
アマミリュウグウヨコエビ Rhachotropis lowryi
奄美大島近海からリュウグウヨコエビ属の1新種を記載。SEM撮影画像を用いて、体表の凹凸やボタン状感覚器の立体構造を記述。ホロタイプに対してミトコンドリア遺伝子COI領域の配列決定も行っています。本邦近海産10種の検索表を提供。ロウリー追悼論文集に掲載。
Poore and Lowry (2023)
Ampelisca capella
Ampelisca katoomba
Ampelisca mingela
Byblis liena
Byblis pialba
Byblis wadara
グレートバリアリーフと東部オーストラリアからスガメソコエビ科の6種を記載。既知種の報告も行っています。東部オーストラリア産4属(実質26種)の検索表を提供。ロウリー追悼論文集に掲載。
Springthorpe (2023)
Melita lowryi
ニュージーランドからメリタヨコエビ属の1新種を記載。ロウリー追悼論文集に掲載。
Tandberg and Vader (2023)
Metopa insolita
カナダ浅海域から、フジツボや海綿に棲み込む刺胞動物・アフリカウミヒドラ属の一種に付着するタテソコエビの1新種を記載。ロウリー追悼論文集に掲載。
Taylor and Peart (2023)
Palabriaphoxus barnardi
Palabriaphoxus lowryi
Protophoxus munida
Zeaphoxus senecio
Zeaphoxus zealandicus
ニュージーランドからヒサシソコエビ科5新種を記載するとともに、1新属を設立。Palabriaphoxus属の2新種は、ヨコエビ分類界の2大巨人の名前が冠されています。Palabriaphoxus属3種, Protophoxus属2種,Zeaphoxus属2種の検索表を提供。ロウリー追悼論文集に掲載。
Zettler, Bastrop, and Lowry (2023)
Scopelocheirus sossi
ナミブ砂漠沿岸からクツミガキソコエビ属の1新種を記載。ロウリー追悼論文集に掲載。
Cannizzaro, Lange, and Berg (2023)
Hyalella cretae
ネヴァダ州からヒアレラ属 Hyalella の1新種を記載。本属において新北区から得られた初の地下水系種とのこと。本文は有料。
Bhoi, Tarafdar, and Patro (2023)
Demaorchestia alanensis
ヒメハマトビムシ種群の隠蔽種をインドから記載。Demaorchestia属の記録はインド初、最西端の分布のようです。ただし、本属は形態的にも遺伝的にも裏付けに乏しく、将来的に Platorchestia属あたりのジュニアシノニムとして抹消される公算大とみられます。
この属の設立者であり、近年ハマトビムシ類の形態分類を意欲的に行っているアラン・マイヤースに種小名が献名されています。しかし、献名の理由については論文中で「端脚類界隈で有名だから」という雑な説明がされ、かつ語尾も場所を示す不適切な形がとられていて、粗さが目立ちます。本文は有料。
Marin, Yanygina, Ostroukhova, and Palatov (2023)
Palearcticarellus ulagani
アルタイ山脈の高地の湧水から地下水性ヨコエビの1新種を記載。本文は無料で読めます。
Cummings, White, and Thomas (2023)
Leucothoe mucifibrosa
Leucothoe darthvaderi
ベリーズとフロリダから海綿住み込みのマルハサミヨコエビ属の2新種を記載。本文は有料。
というわけで、2023年は 7776種1亜種 のヨコエビが記載されたようです。
<2023年新種ヨコエビ記載論文>
— Cummings, V. A.; White, K. N.; Thomas, J. D. 2023. Two new sponge inhabiting leucothoid amphipod species from the Western Atlantic. Zootaxa, 5389(2): 253–265.
— Özbek, A.; Aydin, G. 2023. A new amphipod from the depths of the Morca Sinkhole (Anamur, Türkiye): Gammarus morcae n. sp. (Amphipoda: Gammaridae), with notes on cavernicolous amphipods of Türkiye. Turkish Journal of Zoology, 47(2),4: 81–93. https://doi.org/10.55730/1300-0179.3118
<その他>
— 有山啓之 2022. 『ヨコエビガイドブック』. 海文堂, 東京. 160 pp.
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<補遺> 16-iii-2024
— Mastumoto et al. (2023a) および Leipsuropus seisuiae を追加