2012年7月28日土曜日

6月度活動報告

怠けております。随分お待たせして、一言お詫びします。

先月なぜ更新しなかったかを少し考えてみましたが、
学会をどう紹介しようか推敲していて、そのうちに忘れてしまったようです。

学会の内容をつらつらと書くのはちょっと違うかと思いつつ、
6月度の活動報告と称して字を多めにお送りします。


2012.6.9

日本動物分類学会

2010年以来、2年振り2度目の参加。
学会員ではありませんが、話を聞けるのは楽しい。
ヨコエビに関する発表があり、これは行かねばということで、千葉県船橋市の東邦大学習志野キャンパスへ。船橋市なのに習志野なんですよね。

語りたいことは山ほどありますが、私の感想として、学問を楽しめるという幸せを忘れてはいけないと思いました。分類学という世界で自分が何をしたいのか、何をできるのか、何も考えていませんでしたが、とにかくヨコエビを追いかけること(特に分類)は疑う余地もなく自分の趣味であり、楽しみだと思います。だったら、ここでいつまでも充電していないで、そろそろ弾ける時かな、と思ったり。
ただ、本当に時間が取りにくいんですよね。そこで、設備改善の方でやってみたいと思います。効率的な作業スペースと機器の充実。現在検討中です。



論文収集

インターネットで論文が手に入るご時世ですが、足で稼がざるを得ないものもあるかと思います。在学時代、行かなくても何とかなったはずの九州遠征が良い思い出となったように、文献収集そのものが少し楽しかったり。分類好きな人はやはり、根がコレクターですね。
さて、今回は近所の県立図書館に出掛け、初見の書籍を見つけたのでコピーしました。

武田正倫(1982)『原色甲殻類検索図鑑』. 北隆館, 東京. pp233-235.

3頁の間に収録されているヨコエビは、淡水のものも含めて9種。分類が古いのは置いておいて、まずヨコエビを9種も載せてくれたことに感謝です。図版は色彩が美しく、あまり見たことのないアプローチの図鑑かなと思いました。花を色や形だけで検索できる図鑑を見た記憶がありますが(このシリーズだったかは失念)、その要領で、甲殻類を簡単に検索できます。ただし、ヨコエビなどのフクロエビ上目は検索表に入ってないようだ。残念!
各種の説明もシンプルで、何となくそのヨコエビのことが分かります。比較的浅場でも見られるカマキリヨコエビ科Ischyroceridae,ドロクダムシ科Corophiidae,ドロソコエビ科Aoridaeは収録されておらず、網羅性は高くありませんが、書籍全体を見ると、甲殻類相全体の知見が凝縮してあるという印象です。
通読に向く図鑑だと思います。ぜひご一読あれ!



サンプル処理

5月に行った三番瀬のサンプルがまだ冷凍庫に眠っておりましたので、発掘してアルコール処理しました。
 サンプルは、採集した日に軽くソーティングして、海水を多めに入れてから瓶ごと冷凍することにしています。冷凍というテクニックは、私のバイブルたる駒井(2003)に則っています。現場にアルコールを持っていく必要がないこと、そして何より標本が身をよじらせたり、足を失ったりすることなく、きれいに仕上がることから、必ず冷凍しています。あと、気のせいかもしれませんが、より長くしっかり冷凍しておいた方が、アルコールに漬けたあと、色が長く残るような気が・・・

さて、サンプルは御覧のように凍りついています。これを常温で溶かします。夏なので、すぐに溶けます。PCが死にかけたのでクーラーをガンガンかけていますが、それでもやっと30℃って何なの?あついぞ、●谷!

砂の多い瓶があったため、中身を皿にあけて洗ってから瓶に戻します。見て下さい、標本では真っ白になっているヒメハマトビムシPlatorchestia platensis sensu latoが、生時の色彩をほぼ留めています!これをアルコールに漬けてもすぐには色は変わらず、しばらく模様を楽しめます。Chapman(2007)にはやけに丁寧な模様の解説があったと記憶していますが、日本でやってる人いないのかな・・・
 

この「S」は、サディスティックという意味ではなく、Aから連番で振っている仮の整理札です。2cm角の耐水ペーパーで作ってあり、現場では採集場所に置いて写真を撮り、それをサンプルと一緒の瓶に入れておき、最後に正式なラベルを作るまで管理します。現場で採集場所の情報をメモする時もメモ帳にこのアルファベットを書いておけば、どの標本がどんな場所で採れたのか、後で辿ることができます。また、こうして写真を撮る時には大体のスケールの代わりになります。小さいSは、顕微鏡下で写真を撮る時に写りこませるためのものです。
実際の使用例は、また改めて。


先ほどの設備改善を実施するために、顕微鏡のスペース確保が必要と考えられました。そのためにデスクのレイアウト変更が必要で、そのために部屋の配置換えが必要で、そのためにまずは本棚の充実が必要で、ということで、ようやく本棚を買いました。
これからこれを逆で辿っていき、顕微鏡の入手まで漕ぎつけられればと思います。
今年中が目標かな・・・



参考文献

駒井智幸 (2003) 甲殻類. In;松浦啓一(編著)『国立科学博物館叢書③ 標本学 自然史標本の収集と管理』. 東海大学出版会, 東京. pp.39-47.

Chapman, J.W. (2007) Gammaridea. In;Carlton,J.T. The Light and Smith Manual Intertidal Invertebrates from Central California to Oregon. Fourth Edition, Completely Revised and Expanded.  University California Press. pp.545-618.