2016年8月18日木曜日

8月度活動報告(その3)


 夏も終わりです。

 8月は31日間、のんびりしてたら過ぎる時間、ふと思い立ち、別件にて伊豆半島を横断することになったのですが、せっかくなのでヨコエビも採らねばと、伊豆の浜に下りました。

 ここ伊豆半島西岸に位置する土肥の海岸は山砂を主とする石英分の多めな茶色い砂浜で、波当たりは強く、陸からもガンガン水が流れているようなえらいところでした。

 最干潮は田子で10:24、始発で出ても到着は9:25頃で、満ちはじめるまで一時間しかありません。

 この海岸に漂着しているのは陸の植物が多く、しかもよく波に洗われている。海藻なし。コアマモぽい海草は少しある。

 ヨコエビリティを感じられぬままいざ出陣。手頃なヨシを拾ってみる。




 おるやん!ハマトビめっちゃおるやん!
 色彩的にはPlatorchestia pacificaと同じにしか見えないヒメハマトビムシ種群がピョコピョコと飛び回っております。
   (※ 持ち帰り同定したところP. pacificaと思われましたが、結論を出すにはもう少しメスの形質を検討したいです)

 しかし、どうやら私は本種の捕獲を苦手とするようで、一向に性比の偏りを改善できません。
 時間が押しているため岩場を目指します。


 
釣りと遊泳は禁止ということで、もしかしたらヨコエビ採取ならOKかも(駄目でしょう)




 サンゴモは見えますが、全くもって大型海藻がありません。

 石を拾うと裏には小さなカニダマシがうごめいており、どうやらメリタのニッチはこいつが占めているようです。
 
何らかのミノウミウシ的な腹足類

 一縷の望みをかけてボロボロの木を拾うものの、コツブ系やウミナナフシなどの等脚類しか出てきません。

 最干潮を過ぎ、今回の採集は断念しました。




 私、安良里で採れたサンプルは持っているのですが、紅藻が多くコンブノネクイムシなども含まれていることと、下田は江の島を凌ぐ海藻天国という情報も掴んでおり、伊豆半島のヨコエビリティはこの程度で終わらないと確信しています。
 やはり大型藻類のあるところにヨコエビあり。海藻の探索に力を注ぐ必要がありそうです。



 
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 あまりに報告できることがないためハマトビムシの効率的な捕獲方法について書きます。
 夜間にライトトラップを用いて集めることができること(ハマトビキャッチャー)をご存知の方も多いと思いますが、当然のことながら同じことを昼間にはできません。
 ハマトビムシは水を張ったバットに受けて捕まえるのが鉄板ですが、すぐに水から出て逃げたり、水深が浅ければ水中からも跳び跳ねることができるので、バットに捕らえておけるのはほんの数秒です。
  バットに固定液を入れたり、洗剤を垂らしたりすれば落ちた個体をほぼ100%捕獲できそうではありますが、採集後にその液をどこへ捨てるのか、途中でひっ くり返してしまった場合はどうするか、課題があります。生態系の保全に資する分類学研究を行う過程で環境汚染を引き起こしている場合ではありません。

 要するに、そのへんにあってそのまま捨てられるものか、確実に持ち帰ることができるものしか使いたくないということですね。


 しばし考え、次のような結論を出すに至りました。

 海水は海水でも、思いっきり濃い海水なら動きを鈍らせられるのでは? 

 

 ということで安定の伯方の塩!こちら、メキシコやオーストラリアより輸入した天日塩を日本の海水に溶かした後に釜にかけ煎熬法により製塩した、日本では知らない人はいないとも言われる定番商品です。


塩化マグネシウムが残る粗塩タイプを使用。そのへんで海水を汲み、溶け残るくらい大量に塩を加えてみます。


 さっそくハマトビムシポイントで使用してみると、確かにこれは絶大なパワー… 水から上がりにくくなるばかりか、バットのフチから跳ねようとする個体がバランスを崩してバットの中にとんぼ返りするなど、もう完全に危険物質であることは間違いありません。
 他方で、少しばかり塩があっても上に乗っただけの個体は今までと変わらずすぐに逃げていったので、どっぷりと浸からなければ効果はないようです。

 ということで、最近導入したスポイトの出番です。
 塩分が高められた海水の中で動揺するハマトビムシをスポイトで捕捉、何回か海水で揉んでから採集容器にGO。これで捕獲効率が格段に向上しました。


 ただし、このエキストラハイパートニック法(EHT法:今、適当に名付けた)は効果がありすぎる故に、落下して脱出できないでいるうちにハマトビムシはお亡くなりになってしまいます。根こそぎ採集に繋がるので、手持ちバットで少しずつやり、必要な個体数が集まったらすぐに撤収するような感じがよいかと。


海水に入れただけの個体
EHT法で採取した個体 


 また、標本にした後にこの高塩分が形質にどのように作用するのかまだ分かりませんので、これは追って検証していきたいと思います。少なくとも、アルコール中では真っ白けになってしまう体色が濃塩水中では黄色みと斑紋を残し、肢の末端より赤色を帯びることが分かりました。濃塩水漬けにすることで体のどこかが収縮して破損したり、逆に低張液に入った時に膨隆・破損したり、そういった恐れもあります。






 さて、持ち帰る際の話ですが、クーラーバッグに、サンプルの入ったケースとパ○コを入れる。
 ホームセンターで買ったプラスティックケースに、樹脂製ピンセット, チャック付きポリ袋, スポイトを収納しています。ボトルには70%エタノール。

梨味出た!


 ○ピコを用いる利点を、以下の通りに考えています。

1.だいたいのコンビニやスーパーに置いてあり、必ず凍った状態で手に入る
2.手頃なサイズで場所をとらない
3.溶けても液体が漏れず衝撃にも強い
4.溶けても美味しい(用を為さなくなったら場所を選ばずその場で処分できるので、買い足しても余計な荷物が増えない)


 さきほどのケースと一緒に入れた場合、2本セットの1包装¥140-で、350ml缶6本用の小さなクーラーバッグ内では3時間程度は普通に冷えてます。


 サンプルを冷やす理由は、狭いサンプル袋の中で暴れ個体同士が干渉するなどして壊れるのを防ぐため,炎天下で煮える→死ぬ→溶ける→バラけるという現象を避けるためです。色彩を残すなどの理由で生きたまま持ち帰りたい場合はこまめな温度管理が必要ですが、暴れたり煮えたりするのを防ぐには、1日1,2パピコくらいで充分かと思われます。



 意外とフィールドに行けた夏でした。

 本当は記載に向けて産地の調査をしたいところで、 こちらもお手軽にできるツールの開発が必要と思われます。
 あと顕微鏡な・・・
 














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