2018年4月6日金曜日

銚子に乗って(4月度活動報告)


 桜吹雪の中にどこか華やいだ鳥の声が混じる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今日も今日とて仕事をサボり、心の中のヨコエビが囁くまま、海へとやってきました。

 このたびのフィールドは銚子です。


 Google Mapを活用したロケハンの賜物、ハマトビオフの候補でもあったのですが、未だヨコエビを求めたことのない土地で、そのポテンシャルは未知数です。外房の更に太平洋に突き出た岬ですから、ガシガシと波に削られ、さぞ外湾環境を極めていることと思います。


 フィールドはこんな感じです。




溢れるヨコエビリティ




  おもむろに手近な海藻をガシャってみると…



 どんだけおんねん。




 2mmくらいのヨコエビがたくさん泳ぎ回っています。しかも速い。


 

 あいにく海藻の種は分かりませんが、やはり構造の細かいものにヨコエビが多く、枝分かれがない帯のような葉部にはヘラムシの仲間が幅を利かせているようです。





モクズヨコエビ類は少なくとも4種くらいはいそう。

 モクズヨコエビ科が圧倒的に優占していますが、ヒゲナガヨコエビ科やElasmopusイソヨコエビ属も混じります。

恐らくAmpithoeヒゲナガヨコエビ属ですが、
 下のやつはヤバいです。

  この赤い網目のヒゲナガヨコエビは一体何者なんでしょう・・・
 未成熟らしく性別は不明でした。プロポーションからしてもかなり頭部が大きく、これから成長するのかもしれませんが既に10mmくらいあるので普通に大きな種なのでしょう。底節板や尾肢の形質からヒゲナガヨコエビ属で問題ないかと思いますが、成熟個体を採らないと議論は難しそうです。


Aoroidesユンボソコエビ属

  数は少ないもののAoroidesユンボソコエビ属も採れました。この類はこれまで潮下帯砂泥底でお目にかかってきましたが、ユンボソコエビの仲間は海藻表面からよく採れるグループでもあります。





 そして、場所によりカマキリヨコエビ科も。根をゴソゴソやるとゴカイと一緒に採れました。

Jassaカマキリヨコエビ属

Ericthoniusホソヨコエビ属




 もう少し磯の方に行ってみます。




 砂浜の先に岩の防波堤があり、そこから陸につながる磯場が広がっています。

 海水浴のオフシーズンは磯遊びを楽しむ人が結構来ているようです。砂浜側も楽しいよ。



 こんな感じの岩場です。

Aplysia


Patiria





 そのへんをゴソゴソしてみると…

Maeridae スンナリヨコエビ科

 スンナリヨコエビ科ですね。
 江ノ島で見かけたのもこんな色してました(咬脚の形状は違う)。


 やはりイソヨコエビ属もいます。

10mm以上あるElasmopus

 というかイソヨコエビこんなデカくなるのか…


 こちらはモクズ率が低い気がします。


 あと、これは・・・

Photidaeクダオソコエビ科・・・?


 Gammaropsisのような気がしますがもう少しサンプルを集めたいところです。








 上げ潮に転じてから、何やら水面スレスレを粟粒らしきものがジグザグ動いています…



 直感ですが、まあこれはたぶんヨコエビでしょう。そうに違いない。



 海藻から飛び出て、少し泳ぐとすぐに別の海藻の中に入り込んでいます。
 こういう習性のやつは捕食性のことが多いのですがどうなんでしょう…


 とりあえずバットですくってみると、



 恐らくGuerneaテッポウダマ属(エンマヨコエビ科)です。
 この亜科は自己初です。

生時は眼が赤いGuernea


 ”鉄砲玉”というので真っすぐ突き抜けるのかと思いきや、ジグザグ遊泳をしながら水面近くで餌を採っているようです。 この浅場では小魚をたくさん見かけたので捕食圧は半端ないはずですが、この泳ぎ方に生き残りのヒントがありそうです。




 潮がぐんぐんと上がってきたので、潮上帯の採集に切り替えます。



 まわりの岩の表面が海藻だらけなので、打ち上げ海藻もかなり充実しています。


 めくると大量のハマトビムシが…


Sinorchestia nipponensis


 九十九里では、もっと上のほうの砂地に穴を掘っている感じだったニホンスナハマトビムシですが、ここではヒメハマトビムシのように漂着物の下に潜りこんでいたので驚きました。少し跳ねるし(森野・向井, 2016にもそう書いてはある)。


 もちろんヒメハマトビムシもいました。おそらくpacificaではないかと。

Platorchestia cf. pacifica



 海岸には砂浜か草地が連続しており、林に繋がっていますが、乾燥気味であまりヨコエビリティを感じません。砂浜も狭く短いせいか、スナハマトビムシ感はあまりなさげで、潮間帯の採集で標本のロットを稼ぎすぎてしまったため今回はこのくらいで引き揚げることにしました。




 2時間程度の採集で、8科12+属が得られました。しかしまだフィールドから匂い立つヨコエビリティを感じます。
 稀に見る駅近のサイトで、銚電沿いにはずっと同じような岩場が続いているので、また攻めてみたいと思います。




 これはさすがに今どきあんまりない



(引用文献)
- 森野浩・向井宏 2016. 砂浜フィールド図鑑(1)日本のハマトビムシ類. 海の生き物を守る会, 京都市.



 

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